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東京地方裁判所 平成12年(ワ)10718号 判決

原告 中山伸二

右訴訟代理人弁護士 松原祥文

被告 日立信販株式会社

右代表者代表取締役 二重作弘正

右代理人支配人 湯井修

主文

一  被告は、原告に対し、金一二一万三九一八円及び内金一二〇万五八二三円に対する平成一二年二月一六日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、金一五一万三九一八円及び内金一二〇万五八二三円に対する平成一二年二月一六日から支払済みまで年六分の割合による金員、内金三〇万円に対する平成一二年六月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、原告が被告に対し、借受金の返済が利息制限法に違反し無効であるとして、不当利得に基づき返済金(過払金)の返還を請求し、さらに、原告が被告に対し右返済にかかる借受債務の内容について開示を求めたのに、被告が開示しなかったこと及び債務完済後の被告の執拗な取立請求がいずれも不法行為に当たるとして、損害賠償を請求する事案である。

一  争いのない事実

1  被告は、無担保・小口の消費者金融を主要な業務内容ととする株式会社である。

2  被告は、平成元年一月一九日から平成一二年二月一五日までの間、原告に金員を貸し付け、原告はこれを返済するという取引が繰り返された。

3  右取引につき、被告は原告に対し、過払金等一二一万三九一八円及び内金一二〇万五八二三円に対する平成一二年二月一六日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払う義務がある。

4  金融監督庁の「事務ガイドライン」3-2-3には債務者から帳簿の記載事項のうち当該弁済にかかる債務の内容について開示を求められたときは協力する旨の規定がある。

二  争点(不法行為の成否)

(原告の主張)

1 被告は、右取引につき返済にかかる借受債務の内容について開示を求められたときには「事務ガイドライン」に基づき開示義務があるところ、原告から、平成一二年二月二二日以降再三訴訟代理人弁護士を通じて、右開示の要求があったにもかかわらず、これに応じなかった。被告の右態度は不法行為に当たる。その結果、原告は、本件訴訟提起のやむなきに至った。

2 被告は、本来、平成三年五月三〇日以降、原告に対して何らの貸付金債権がないのに、執拗にその支払を要求したが、これは不法行為に当たる。

3 これら不法行為によって、原告は、弁護士費用として一五万一九九七円、精神的損害として一四万八〇〇三円の合計三〇万円の損害を被った。

(被告の主張)

1 「事務ガイドライン」に基づく開示義務は争う。

2 被告は原告に対し、執拗に支払を請求したことはない。一般に貸金業者が約定に基づく請求を行うのは、社会通念上当然の権利行使である。

第三当裁判所の判断

一  不当利得について

争いのない事実に記載のとおり、被告は原告に対し、過払金等一二一万三九一八円及び内金一二〇万五八二三円に対する平成一二年二月一六日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払う義務がある。

よって、原告の不当利得返還請求は理由がある。

二  不法行為について

1  証拠(甲一ないし三、四の1、2の1、2、五、乙一)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(1)  原告は、訴訟代理人を通じて、平成一二年二月二二日、被告に対して、原告の債務整理を開始したので、正確な負債状況を把握するため、取引経過すべてについて開示を要求したが、被告は、同年三月一日、元金残高しか開示しなかった。そこで、原告は、訴訟代理人を通じて、同年四月四日、再度平成元年二月からの取引経過すべてについて開示を要求したが、被告は、平成一二年四月七日、原告との間で平成一〇年五月七日新たに金銭消費貸借基本契約を締結したとして、同日以降平成一二年二月一五日までの計算書しか開示しなかった。なお、被告は、本訴においてはじめて平成元年一月一九日以降の弁済にかかる借受債務の内容について開示した。

(2)  被告は、原告が約定の返済期日を徒過すると自宅や職場に電話をかけ返済を督促したので、原告は平成一二年二月一五日まで返済し続けたが、複数のサラ金業者からの借入れが支払えず、任意整理を訴訟代理人に依頼した。なお、原告の被告に対する返済につき過払利息を元金に充当すると、結果的に平成三年五月三〇日の返済をもって被告の原告に対する借受債務は完済されたこととなる。

2  そこで、不法行為の成否につき検討する。

(1)  まず、原告は、被告には金融監督庁の「事務ガイドライン」3-2-3に基づき開示義務があり、被告はそれに違反した不法行為が成立すると主張するが、右「事務ガイドライン」は所詮ガイドラインすなわち指導目標あるいは指針にすぎず、その規定振りも協力するという文言であるから、他に特段の事情のない限り、それに違反したからといって直ちに不法行為が成立すると解することは相当でない。したがって、右認定をもって直ちに被告の不法行為が認められるとは断ぜられない。

(2)  次に、原告は、何らの貸付金債権がないのに執拗に返済を要求するのは不法行為に当たると主張するが、原告が約定の返済期日後の返済を継続中被告に対し過払金の返還を請求した形跡は何らうかがえないから、他に特段の事情がない限り、前記認定の取立てにつき直ちに不法行為が認められるとは断ぜられない。

3  よって、原告の不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない。

三  結語

以上によれば、原告の本訴請求は、被告に対し、一二一万三九一八円及び内金一二〇万五八二三円に対する平成一二年二月一六日から支払済みまで年六分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余の請求は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 都築弘)

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